KubeCon+CloudNativeCon Europe 2025から初日のオープニングキーノートを紹介

2025年の4月2日に行われたKubeCon+Cloud Native Con Europe 2025のキーノートを紹介する。約13,000人というKubeConの歴史の中で最大の参加者数となったカンファレンス。その最初に行われたキーノートのオープニングとして、Cloud Native Computing Foundation(CNCF)のCTO、Chris Aniszczyk氏が登壇した。会場の後方には2階席まで用意されだが、それでも満席という状況で始まったキーノートとなった。
Aniszczyk氏は、2025年がCNCF創設から10年経過した記念すべき年であることを解説して、KubeCon Europe 2025のキーノートを開始した。
CNCF創設の最大の理由となったKubernetes自体は2015年に1.0がリリースされ、CNCFには2016年に寄贈されているため、2024年がKubernetesにとっての10年目だった。つまり昨年、2024年がKubernetesの10周年を祝う年だったが、KubeCon自体が2016年に最初のカンファレンスをNew Yorkで開催したことから計算して10周年ということだろう。「10 Years Old」ではなく「10 Years Young」と表記しているところに、まだ若くこれからも続いていくことを強調しているように思える。
このスライドにはCNCFが創設された時に参加した企業名が記されているが、太字で強調されているのはすでに買収や廃業などで市場にはいなくなってしまった企業だ。あえてそこを強調しているのがおもしろい。
そしてCNCFが育成したプロジェクトも紹介された。11年目のKubernetesだけではなく、TUFは16年、Linkerdが10年、Cilliumが9年という年月がプロジェクトとして経過していることで、CNCF自体の歴史よりもプロジェクトが長く継続していることを示した。
このスライドではCNCFのコミュニティに関する活動を総括。約30万人のコントリビューターを育成し、300万回以上のコードコミットを200以上のプロジェクトに対して行い、コントリビューターの国籍は190か国以上に及ぶと説明した。そしてCNCFのプロジェクトを使って開発を行うデベロッパーは2020年から200万人以上増加し、920万人に到達したなどの調査の内容を紹介した。この調査の結果はレポートとして公開されている。
CNCFとして強調したかったのは、新たに加わったメンバーやCNCFの認定試験の充実という部分だろう。
CNCFに新規加入した企業としてT-Mobileやスイスの大手金融グループUBSなどの名前が記されたスライドでは、ベンチャー企業だけではなく大手のスポンサーの支持を得ていることを見せつけた。
またデベロッパーやオペレータへの啓蒙活動として、CNCFが認定試験の充実に注力していることは誰もが認める事実だが、新たにクラウドネイティブ関連の認定試験すべてにパスしたエンジニアを「Golden Kubestronaut」として認定することを発表。
ここではそのエンジニアに金色のニット帽とジャケットを着用させて立ち上がらせて会場にお披露目。参加しているエンジニアに認定試験の取得を強く促した。
またトレーニングプログラムの拡充も発表し、アフリカでのトレーニングプログラムの開始を説明した。さらにKubernetesに限定しないプラットフォームエンジニア向けの認定試験やオープンソースのデベロッパー認定試験(Certified Open Source Developer)なども発表され、CNCFが認定試験を軸にデベロッパーや運用エンジニアをクラウドネイティブなシステムの開発運用の主体として取り込んでいく計画を解説した。
認定試験から離れて次に紹介されたのが、ヨーロッパ向けの新組織NeoNephosだ。
NeoNephosは、ヨーロッパが主権者となってクラウドとエッジのプラットフォームを開発するLFの下部組織として公表された。ヨーロッパが主権を取るという部分に、アメリカ企業が主なオープンソースプロジェクトの主体としてコントロールする現状から、実権をヨーロッパに取り戻したいという意図を感じる内容となった。
メンバーとなっている企業名はSAPとドイツテレコムの子会社T System以外は、大体がベンチャーと言えるが、NeoNephosが使うCNCF配下のプロジェクトのほうが要点と言えるだろう。
KubernetesやOpenTelemetry、Prometheusは当然だろうが、IstioやRook、Crossplane、Persesなどが挙げられているのは興味深いと言える。
Crossplaneについては2025年3月に公開されたCNCFのオンラインセミナーが参考になるだろう。
●参考:An introduction to Crossplane ? from managed services to claims
最後にこれから開催されるKubeCon(中国、日本、インド、北米)の日程と場所を再度紹介して、参加を促した。
2026年のKubeCon EuropeとNorth Americaについても日程と場所を公表。Europeはアムステルダムで3月23日から26日にかけて、North Americaは10月26日から29日にロサンゼルスでそれぞれ開催される予定だ。2024年のKubeCon North Americaの最初のキーノートがパテントトロールの話から始まったことに比べると、かなり楽観的かつ前向きな内容のオープニングとなった。2024年のKubeCon North Americaのキーノートについては以下の記事を参照して欲しい。
●参考:KubeCon North America 2024、初日のキーノートでパテントトロール対策を解説。その意図を探る
連載バックナンバー
Think ITメルマガ会員登録受付中
全文検索エンジンによるおすすめ記事
- KubeCon North America 2024、初日のキーノートでパテントトロール対策を解説。その意図を探る
- KubeCon North America 2024、日本からの参加者を集めて座談会を実施。お祭り騒ぎから実質的になった背景とは?
- 写真で見るKubeCon+CloudNativeCon North America 2024
- KubeCon Europe開催、16000人が参加し、ヨーロッパで最大のテックカンファレンスに
- 写真で見るKubeCon Europe 2024 ベンダーやコミュニティプロジェクトの展示を紹介
- KubeCon+CloudNativeCon North America 2023のキーノートとショーケースを紹介
- CloudNative Days Spring 2021開催。CNCFのCTOが語るクラウドネイティブの近未来
- KubeCon Europe 2024に日本から参加したメンバーで座談会@桜の木の下
- Cloud Native Community Japanキックオフミートアップ レポート
- KubeCon North Americaサンディエゴで開催。12,000人と過去最大の規模に