KubeCon+CloudNativeCon Europe 2025から初日のオープニングキーノートを紹介

2025年6月6日(金)
松下 康之 - Yasuyuki Matsushita
KubeCon+CloudNativeCon Europe 2025から、初日のオープニングキーノートを紹介する。

2025年の4月2日に行われたKubeCon+Cloud Native Con Europe 2025のキーノートを紹介する。約13,000人というKubeConの歴史の中で最大の参加者数となったカンファレンス。その最初に行われたキーノートのオープニングとして、Cloud Native Computing Foundation(CNCF)のCTO、Chris Aniszczyk氏が登壇した。会場の後方には2階席まで用意されだが、それでも満席という状況で始まったキーノートとなった。

会場後方には2階席も用意されていたが、それでもほぼ満席という状況だった

会場後方には2階席も用意されていたが、それでもほぼ満席という状況だった

最初に登壇したCNCFのCTO、Chris Aniszczyk氏

最初に登壇したCNCFのCTO、Chris Aniszczyk氏

Aniszczyk氏は、2025年がCNCF創設から10年経過した記念すべき年であることを解説して、KubeCon Europe 2025のキーノートを開始した。

Kubernetesよりも1年遅く始まったCNCF

Kubernetesよりも1年遅く始まったCNCF

CNCF創設の最大の理由となったKubernetes自体は2015年に1.0がリリースされ、CNCFには2016年に寄贈されているため、2024年がKubernetesにとっての10年目だった。つまり昨年、2024年がKubernetesの10周年を祝う年だったが、KubeCon自体が2016年に最初のカンファレンスをNew Yorkで開催したことから計算して10周年ということだろう。「10 Years Old」ではなく「10 Years Young」と表記しているところに、まだ若くこれからも続いていくことを強調しているように思える。

CNCF最初のボードミーティングはNew York Timesのオフィスを借りて行われた

CNCF最初のボードミーティングはNew York Timesのオフィスを借りて行われた

このスライドにはCNCFが創設された時に参加した企業名が記されているが、太字で強調されているのはすでに買収や廃業などで市場にはいなくなってしまった企業だ。あえてそこを強調しているのがおもしろい。

CNCF配下のプロジェクトがCNCFよりも長い期間、持続していることを紹介

CNCF配下のプロジェクトがCNCFよりも長い期間、持続していることを紹介

そしてCNCFが育成したプロジェクトも紹介された。11年目のKubernetesだけではなく、TUFは16年、Linkerdが10年、Cilliumが9年という年月がプロジェクトとして経過していることで、CNCF自体の歴史よりもプロジェクトが長く継続していることを示した。

コミュニティの活動を総括。10年で30万人弱のコントリビューター

コミュニティの活動を総括。10年で30万人弱のコントリビューター

このスライドではCNCFのコミュニティに関する活動を総括。約30万人のコントリビューターを育成し、300万回以上のコードコミットを200以上のプロジェクトに対して行い、コントリビューターの国籍は190か国以上に及ぶと説明した。そしてCNCFのプロジェクトを使って開発を行うデベロッパーは2020年から200万人以上増加し、920万人に到達したなどの調査の内容を紹介した。この調査の結果はレポートとして公開されている。

●参考:Cloud Native 2024(PDF)

CNCFとして強調したかったのは、新たに加わったメンバーやCNCFの認定試験の充実という部分だろう。

CNCFに新規加入した企業名を紹介。T-MobileやUBSなどの名前が確認できる

CNCFに新規加入した企業名を紹介。T-MobileやUBSなどの名前が確認できる

CNCFに新規加入した企業としてT-Mobileやスイスの大手金融グループUBSなどの名前が記されたスライドでは、ベンチャー企業だけではなく大手のスポンサーの支持を得ていることを見せつけた。

またデベロッパーやオペレータへの啓蒙活動として、CNCFが認定試験の充実に注力していることは誰もが認める事実だが、新たにクラウドネイティブ関連の認定試験すべてにパスしたエンジニアを「Golden Kubestronaut」として認定することを発表。

13個の認定試験をパスしたエンジニアをGolden Kubestronautとして表彰

13個の認定試験をパスしたエンジニアをGolden Kubestronautとして表彰

ここではそのエンジニアに金色のニット帽とジャケットを着用させて立ち上がらせて会場にお披露目。参加しているエンジニアに認定試験の取得を強く促した。

会場前方に集められて紹介されるGoldenなエンジニアたち

会場前方に集められて紹介されるGoldenなエンジニアたち

またトレーニングプログラムの拡充も発表し、アフリカでのトレーニングプログラムの開始を説明した。さらにKubernetesに限定しないプラットフォームエンジニア向けの認定試験やオープンソースのデベロッパー認定試験(Certified Open Source Developer)なども発表され、CNCFが認定試験を軸にデベロッパーや運用エンジニアをクラウドネイティブなシステムの開発運用の主体として取り込んでいく計画を解説した。

認定試験から離れて次に紹介されたのが、ヨーロッパ向けの新組織NeoNephosだ。

NeoNephosは、ヨーロッパが主権者となってクラウドとエッジのプラットフォームを開発するLFの下部組織として公表された。ヨーロッパが主権を取るという部分に、アメリカ企業が主なオープンソースプロジェクトの主体としてコントロールする現状から、実権をヨーロッパに取り戻したいという意図を感じる内容となった。

NeoNephosをLF Europeの下部組織として発表。EUからのファンドを受ける組織だ

NeoNephosをLF Europeの下部組織として発表。EUからのファンドを受ける組織だ

メンバーとなっている企業名はSAPとドイツテレコムの子会社T System以外は、大体がベンチャーと言えるが、NeoNephosが使うCNCF配下のプロジェクトのほうが要点と言えるだろう。

NeoNephosが使うCNCFのプロジェクト

NeoNephosが使うCNCFのプロジェクト

KubernetesやOpenTelemetry、Prometheusは当然だろうが、IstioやRook、Crossplane、Persesなどが挙げられているのは興味深いと言える。

Crossplaneについては2025年3月に公開されたCNCFのオンラインセミナーが参考になるだろう。

●参考:An introduction to Crossplane ? from managed services to claims

香港、日本、インド、北米のKubeConの日程と場所を紹介

香港、日本、インド、北米のKubeConの日程と場所を紹介

最後にこれから開催されるKubeCon(中国、日本、インド、北米)の日程と場所を再度紹介して、参加を促した。

2026年のKubeCon EuropeとNorth Americaの日程と場所を公開

2026年のKubeCon EuropeとNorth Americaの日程と場所を公開

2026年のKubeCon EuropeとNorth Americaについても日程と場所を公表。Europeはアムステルダムで3月23日から26日にかけて、North Americaは10月26日から29日にロサンゼルスでそれぞれ開催される予定だ。2024年のKubeCon North Americaの最初のキーノートがパテントトロールの話から始まったことに比べると、かなり楽観的かつ前向きな内容のオープニングとなった。2024年のKubeCon North Americaのキーノートについては以下の記事を参照して欲しい。

●参考:KubeCon North America 2024、初日のキーノートでパテントトロール対策を解説。その意図を探る

著者
松下 康之 - Yasuyuki Matsushita
フリーランスライター&マーケティングスペシャリスト。DEC、マイクロソフト、アドビ、レノボなどでのマーケティング、ビジネス誌の編集委員などを経てICT関連のトピックを追うライターに。オープンソースとセキュリティが最近の興味の中心。

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