キャリアに迷うすべての人へ ー40代からの生き方を語る「きのこカンファレンス」開催レポート

「エンジニアがこの先生きのこるためのカンファレンス2025」(略称:きのこカンファレンス)が、前夜祭(3/8)、本編(3/9)の日程で開催されました。
本イベント、一般参加者の募集開始から2週間ほどで満席となってしまっていたため、参加したいのにできなかった方も多いのではないでしょうか。
本稿では、きのこカンファレンス2025実行委員のメンバーが、イベントの概要から当日の様子、参加者の反応まで合わせてレポートします!
イベントの概要
きのこカンファレンスは、「エンジニアがこの先生きのこるためのカンファレンス」というその名前のとおり、参加するエンジニアがこの先も“エンジニアを続ける"ことを目的にしたカンファレンスです。
また、本カンファレンスは登壇される方を40歳以上に限定しており、長くキャリアを積み重ねてきた方がこれまでの経験や知識を語ることで、参加者が自身のキャリアやロードマップについて見つめ直す機会になることを目指しています。
表:きのこカンファレンスの基本情報
年齢層などの参加者属性を確認できる参加者概況記事はこちら
概要 | 内容 |
---|---|
名称 | エンジニアがこの先生きのこるためのカンファレンス2025 |
略称 | きのこカンファレンス2025 |
開催日時 | 【前夜祭】2025年3月8日(土) 【本編】2025年3月9日(日) |
開催場所 | docomo R&D OPENLAB ODAIBA(東京都港区) |
参加者数 | 237名(スタッフを含む) |
公式サイト | https://kinoko-conf.dev |
公式Xアカウント | https://x.com/kinoko_conf |
なぜこのカンファレンスを始めたのか
このカンファレンスが始められた理由は4点あります。
ベテラン世代に活躍の場を提供したい
最新事例が発表される多くのカンファレンスでは、30代の方が中心になって活躍している印象を受けます。ベテラン世代になると、たとえ主催者側がウェルカムな状況でも、本人に「若手に場を譲りたい」という気持ちが働いてトーク応募をためらったり、若手を送り込むようなケースもあるのではないでしょうか。
また「20代限定」といった若手を応援するようなイベントはさまざまありますが、逆にベテランに限定したイベントはほぼ存在しないため、この点でもユニークなイベントになるのではないかと考えました。
キャリアや人生の歩み方についてオープンに議論する場がなかった
長い人生を歩むなかで、誰もが一度はキャリアについて悩むことがあるのではないでしょうか。ライフステージが変わったり、健康問題や体力の衰えからワークライフバランスを見直したり、年齢と共に求められるスキルが変わり変化を余儀なくされたり、おそらく皆さんさまざまな理由から、変化せざるを得ないケースがあるはずです。
また、技術の進歩はめざましく、例えば50代のエンジニアにとってはインターネットのない時代から今に至るまでどのようなキャリアの変遷を遂げてきたのか、今の若手からすれば想像がつかないでしょう。昨今では生成AIなどゲームチェンジャーとなるような技術が台頭し、想像できないような大きな変化に立ち向かう方法を知ることは、自身が“しなやかに"キャリアを積んでいくための武器になるはずです。
しかし、こういった“人生の歩み方"を主なテーマにしたボランタリーベースのカンファレンスは過去になかったため、その分野に切り込んでいきたいという思いがありました。
若手にエンジニアの生きざまを継承したい
カンファレンスや勉強会は、トークを通じて聞き手に何かしらの技術や知識を継承していきますが、きのこカンファレンスでは「生きざま」を継承したいと考えました。
ベテランがこれまでどうやって生き残ってきたか。どんな悩みを抱え、どう乗り越えてきたか、その背中をオープンな場で見せつけることができるのは素敵ですよね。カンファレンスを通じて技術や職責ではなく「生き方・生きざま」を見せるというのは、私たちならではの切り口です。
エンジニアとしての終活を描く
きのこはエンジニアが「生きのこる」ためのカンファレンスですが、いつかエンジニアとしてキャリアが終わる瞬間が必ず来ます。その瞬間に自身はどうなっていたいのか、終活として何をしていくのか、ベテラン世代になると、そういった話も気になるのではないでしょうか。
例えば、今回トップスポンサーをしていただいた転職ドラフトさんが定義する「カレイドスコープキャリア理論」には「真実性(オーセンティシティ)」という言葉があります。これは、個人の内面的な価値観が、外面的な行動や雇用組織の価値観と一致している状態を指します。キャリアを積み重ねることで醸成される価値観をもとに私たちが何を遺していくべきなのか、そういったことも議論できるといった点でも、奥行きの深いカンファレンスとなったのではないかと考えています。
イベント名の由来
2002年にインターネット掲示板サイト『2ちゃんねる』で生まれたミーム「この先生きのこる」に由来しています。
当時流行した言葉としてトークする40代以上の方に懐かしんでいただきつつ、イベントの趣旨を表す内容としても分かりやすいと考えました。また、語呂もキャッチーなので、この名前を正式名称にしました。
イベント当日の様子
当日の見どころ(1):前夜祭
前夜祭では、本編ではなかなか聴けないようなコンテンツを取りそろえました。例えば、Web系言語としてはかなり古くから使われている「Perl」を題材に、言語がどのように移り変わって行ったかの解説や、ライブコーディングを交えながら言語の変遷をエンジニアの生き方になぞるような「Perlの生きのこり」というセッションがありました。
他にも、人材系企業が合同で普段は発信しないようなリアルなキャリアトークをしたり、参加者同士で交流を深めるようなミニゲームをしたり、前夜祭らしいざっくばらんな内容になっていました。
当日の見どころ(2):
公募セッション/スポンサーセッション
LTやセッション、スポンサーセッションなどを含めて、30本程度のセッションが実施されました。その中でも、次のようなセッションが注目を集めていたようです!
- 老いやライフイベントとの向き合い方の話
- 技術書を100冊以上書き、システム開発もしている人がどうやって時流を乗り切ってきたのか?
- 自分の子供が自分と同じモバイルアプリエンジニアになったエピソード
- プレイヤーとマネージャーを行ったり来たりした人のエピソード
- 繋ぐ人、拾う人になることで案件と立ち位置を確保(案件的にも自分の仕事的にも)する動きをしたエピソード
また、ベテランならではのリカバリー能力を感じるセッションとして「前日にiPadが壊れたので急遽紙に手書きでスライドを描いて、それを投影してプレゼン」する人もおられたようです。
なお、本カンファレンスのセッション内容については、今後YouTubeにて公開していく予定なので、こちらも併せてご覧ください。
「きのこカンファレンス」チャンネル - YouTube
https://www.youtube.com/channel/UCTfB1hxcTKXYOz_13aZzR_w
なお、セッション内容を公開する際には公式Xでも告知しますので、気になる方はフォローしておくのがおすすめです。
「きのこカンファレンス(@kinoko_conf)さん」- X
https://x.com/kinoko_conf
当日の見どころ(3):企画セッション
実行委員会からの企画セッションとして、2つのパネルディスカッションを行いました。
1つは「過去の自分への手紙」と題して、もし過去の自分に1通の手紙を送れるとしたら、どのような内容かを公募し、その内容を読み上げながら議論しました。過去につまづいたときどうやって立ち向かうべきなのか、大人になった自分だからこそできるアドバイスは興味深く、私たち第三者にとっても気づかされる点が多くありました。
もう1つは「エンジニア年表」と題して、参加者がそれぞれ転機となったイベントを年表に付箋で貼っていき、それらを紐解きながら議論しました。例えば「転職」が多くの方にとって挑戦であり、自身がこれまで経験したことのないロールや業種に飛び込んで成功をつかむことが転機になっていることが分かりました。また、カンファレンスなど大きなイベントでの登壇が転機になった等、行動することに勇気づけられるような内容でした。
当日の見どころ(4):アンカンファレンス
また、一般参加者も積極的に議論に参加できる「アンカンファレンス」も開催されました。参加者アンケートでも「ひとつのテーマについて少人数で深く議論できたことが印象に残っている」という意見が多く、今後も続けていければと思っています。
参加者からの意見
参加された皆さまにアンケートを行わせていただいたのですが、次のような意見がありました。
- 自分の「できる/できない」を常に把握し、準備しておくことでチャンスを逃さないという気づきがありました!
- できそうなことへ、背伸びして一歩踏み出す姿勢に学びがあったり、共感を覚えました。
- 還暦間近での転職エピソードや50代での転職など、様々なセッションでの発表が「何歳でも挑戦して良いんだ」という学びになった!
- ログ取得・予防保守になぞらえたセルフケアのセッションが分かりやすく、実践的で良かった。
- コミュニティや登壇は人脈形成やモチベーション維持に不可欠だと感じた。
- AI時代でも(AI時代だからこそ)、具体と抽象を行ったり来たりできる能力や、基礎的な能力が普遍的な生存戦略として強調されており、刺激になった。
- 多様性や無意識でのバイアスへの気づきが得られ、印象的だった。
- 「一緒に働きたい」と思われる振る舞いが肩書きよりも大事だなと思えました。
- プレーヤーとマネージメントを行き来してきた経緯や、その選択に至った理由が分かりやすく開示してもらえて、自身のキャリア設計の参考になった。
次回の開催に向けて
本イベントでは、登壇者については40歳以上という年齢制限を設けていましたが、参加者には年齢制限がありません。実際に今回は学生や20代の若い世代にも多く参加していただき、世代を問わずさまざまな立場の方に交流を深めてもらうことができました。
なお、運営を支えるコアスタッフについても、学生や20代の若手メンバーが多く参加してくれています。きのこカンファレンスでは経験豊富なスタッフと若い感性を持つスタッフが協力し合い、幅広い視点からイベントを作りあげることができました。
また、今回は当初の立ち上げ時に企画した内容が、実際には実現しなかったもの・企画もたくさんあります。次回の開催予定は今のところ未定ですが、近々発表予定です。ぜひ、期待してお待ちください!
連載バックナンバー
Think ITメルマガ会員登録受付中
全文検索エンジンによるおすすめ記事
- 仕事を選ぶことは生き方を選ぶこと。「みんな電力」代表大石氏とNZ在住の作家四角大輔氏が示す「未来のための働き方」とは
- 「PyCon JP 2015」がやってくる!! 見どころ満載、楽しみ方は無限大
- PyCon JP 2016開催直前! 今年の見どころを探る― 運営メンバーのコメントを添えて
- スキルアップ、キャリアアップ、自分らしい働き方を実現。フリーランスのパワーを最大化する「Independent Power Fes」レポート
- チャレンジに「これが正解」というものはない。「好き」を仕事にして生きたいなら「まずはやってみる」こと
- こころの健康のためのキャリアとは?
- 日本ユーザーグループ3周年イベントでキーマンが紹介する Windows Azureの上手な使い方
- 今年の実行委員長に聞く! 国内最大級のPHP祭り「PHPカンファレンス2014」の見どころ
- CloudNative Days Tokyo 2021が11月に開催 記者会見で見えた「繋げる」の意味
- 4年ぶり2回目のObject-Oriented Conference 2024、ついに開催