DevOpsを支えるレビュー運用の基本とGitHub活用法

2025年6月24日(火)
石本 達也
第9回の今回は、GitHubを用いたコードレビューの基本と実践方法について解説します。

はじめに

システム開発において、ソースコードの可読性や保守性は非常に重要視されます。何かをコーディングする以上、バグの発生や設計ミスとは切っても切り離せません。また、ソースコードの可読性や保守性が高いと調査や修正が容易になり、開発の効率も向上します。

コードの品質を維持するためにソースコードを視覚的に読みやすくするシンタックスハイライトや、ソースコードの書き方を一定のルールにしたがって整えてくれるフォーマッターなどを使用すると有効的です。

しかし、機械的に行われる処理だけでは、ソースコードの品質を完全に保証することはできません。ソースコードの設計やロジックの正しさ、さらにはチーム全体のナレッジ共有といった、人間の判断が必要な部分が多く存在するからです。

だからこそ、自動化が進んだ現代においても、コードレビューは依然として重要なプロセスとなっています。

この記事では、DevOps(開発と運用の連携を強化する考え方)実践におけるコードレビューの基本的な流れと、初心者がつまずきやすいポイント、そしてその対処法を紹介します。

コードレビューとは

コードレビューとは、自分が書いたコードをmainブランチにマージする前に、他のメンバーに確認・評価(レビュー)してもらい、コードの品質を高めるための作業です。

コードレビューは「間違い探し」や「ダメ出しされる場」といった、ややネガティブな印象を持っている方もいるかもしれません。しかし、実際にはコードレビューはチーム全体のスキル向上やナレッジ共有、さらにはコミュニケーションの活性化にもつながる、非常に重要なプロセスなのです。

コードレビューの主なメリット:

  • コード品質の向上:バグ(不具合)や設計ミスの早期発見により、堅牢なコードに
  • 属人性の排除:特定の人しか理解できないコードを減らし、誰でも保守できる状態に
  • ナレッジ共有:実装方針や開発ルールなどが、自然とチーム全体に伝わる

DevOpsとコードレビューの関係

DevOps(Development+Operations)は開発と運用の垣根をなくし、継続的にソフトウェアをリリース・改善していくための考え方です。

その中で、コードレビューは以下のような役割を担っています。

  • 自動化では判断が難しいポイントの補完
  • 複数人がコードを理解することで運用がスムーズに
  • 品質の担保により、リリース頻度を高められる

自動化だけではカバーできない「人の目による判断」を支える仕組みとして、レビューは重要な位置付けになります。

GitHubでのレビュー活用

GitHubのツールを使えば、難しそうなレビューもスムーズに進められます。はじめての方でも、作業の流れが見える化されて安心です。主な機能は以下の通りです。

  • Pull Request(PR):変更点を送って共有する仕組み。ここでレビューが行われる
  • インラインコメント:変更した行に直接コメントできる
  • レビュー状態の明示:Approve(承認)やRequest changes(修正依頼)で状況が分かりやすく
  • CI連携(GitHub Actionsなど):テストやコードのチェックを自動実行
  • ドラフトPR:完成前の相談やフィードバックを早期に受けられる仕組み

これらを使いこなすことで、レビューは単なる確認作業からチームを育てるプロセスへと進化します。

実践的なコードレビューの基本フロー

ステップ1:ブランチの作成

ブランチ(作業用の分岐線)をmain(またはmaster)から作成します。ブランチ名は、チームのルールにしたがって分かりやすく命名しましょう。

ブランチについての詳細は、第4回「Gitのブランチ戦略の基本とルールを学んで使いこなそう」を参照ください。

ステップ2:コミットとPR作成

作業を終えたら、コミット(コードの変更を記録する単位)してPRを作成します。PRテンプレートがある場合は必ず使用し、次のような情報を記載しましょう。

  • 背景:なぜこの変更が必要だったのか
  • 実装概要:何をどう変えたのか
  • 動作確認方法:画面の変更がある場合はスクリーンショットも添付

ステップ3:CIチェック

CI(継続的インテグレーション)ツールがコードにミスがないかを自動でチェックしてくれます。コードの見た目や動作確認が含まれることもあります。

エラーが出た場合は、修正してからレビューを依頼するようにしましょう。

ステップ4:コメント対応

レビューコメントには丁寧に対応するのが基本です。単に「了解しました」ではなく、なぜそう対応したかを説明すると、円滑なコミュニケーションにつながります。

対応が遅れる場合でも、「明日対応予定です」などと一言添えるだけで印象が変わります。

ステップ5:再レビューとマージ

修正後、再度コミットしてレビューを依頼します。Approveが得られたら、マージ(ブランチの統合)を行います。チームによってはマージ担当者が決まっている場合もありますが、自律的にマージできる仕組みが理想です。

ステップ6:ブランチの削除

PRがマージされたら、不要になったブランチは削除しましょう。GitHubの自動削除設定も活用できます。

はじめてのレビューで
つまづきやすいポイントと対処法

ブランチ名やコミットメッセージを日本語にしてしまった

多くの開発現場では、英語表記が暗黙のルールになっていることがあります。補完機能や他メンバーの理解のためにも、英語を使うのが一般的です。

対処法:ブランチ名やコミットを修正

# 例: 日本語ブランチ「修正/バグ修正」から英語ブランチ「fix/bug-fix」へ変更
git branch -m 修正/バグ修正 fix/bug-fix
# リモートの日本語ブランチを削除
git push origin --delete 修正/バグ修正
# 新しい英語ブランチをリモートへpush
git push --set-upstream origin fix/bug-fix

コミットの修正(直前のみ)

git commit --amend

複数の過去コミットを修正する場合

git rebase -i HEAD~3

コミットの粒度が適切でない

1つのコミットに大きな変更が含まれていたり、逆に小さく分けすぎたりすると、レビューがしづらくなります。

対処法

  • git rebase -iでコミットを整理
  • 「1コミット=1つの意味・目的」を意識する

プルリクエストを分けるよう求められた

バグ修正とリファクタリング(機能を変えずにコードを整理する作業)が同時に含まれているなど、目的の異なる変更が混在していると、PRを分けるよう指摘されることがあります。

対処法

# 新しいブランチを作成
git checkout -b feature/part
# cherry-pick(選んだコミットだけを適用)
git cherry-pick <hash>
# 元のブランチでは不要なコミットを削除
git rebase -i

force pushで履歴が壊れてしまった

force push(強制上書き)は、共同作業中のブランチではトラブルの原因になりやすいため注意が必要です。特にmaindevelopなどの共通ブランチでは使用厳禁です。

対処法

万が一、履歴が壊れてしまったらgit reflog(過去の操作履歴)で状況を確認し、reset --hardで復旧を試みることができます。

git reflog
git reset --hard <hash>

おわりに

コードレビューは「ミスを指摘される場」ではなく、「みんなでコードの品質を良くしていく話し合いの場」です。最初はうまくいかなくて当たり前。経験を重ねれば、自然と慣れていきます。

完璧を求めすぎず、一歩ずつ経験を積むことが大切です。レビューを通して、技術だけでなくコミュニケーション力やチームワークも自然と育っていきます。

この積み重ねが、最終的にはDevOpsの実践力向上にもつながっていくのです。

日本仮想化技術株式会社
Sierやベンチャー企業を経て、現在は日本仮想化技術でDevOps支援サービス「かんたんDevOps」のDev側を担当。「DevOpsを通じて開発者体験を最大化する」をミッションに理想的な開発環境の実現を目指して技術調査や仕組み作りを行っている。

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