連載 [第37回] :
  Gen AI Times

【生成AI完全攻略2025】ChatGPTが「70%を独占」する生成AI市場の最新動向

2025年5月15日(木)
池田 大喜
本記事は、生成AIコミュニティ「IKIGAI lab.」に所属するメンバーが、生成AIに関するニュースを紹介&深掘りしながら、AIがもたらす「半歩先」の未来に皆さんをご案内します。

はじめに

本連載では、生成AIコミュニティ「IKIGAI lab.」に所属する各分野の専門家が、それぞれの視点から最新のAIトレンドとビジネスへの示唆を発信しています。本記事を通じて、皆さまが“半歩先の未来”に思いを馳せ、異なる価値観や視座に触れていただければ幸いです。

生成AI市場は急速な進化を遂げています。主要なAIモデルの性能向上に加え、企業での活用も広がりを見せています。ここでは、提供された情報ソースから、市場の最新動向、組織への影響、そして今後の展望と課題について紹介していきます!

市場の最新動向:主要プラットフォーム競争

調査結果から見る市場シェアの現状

【参照】【生成AIの利用調査】生成AI市場シェア、ChatGPTが70%で圧倒的首位―後発のGeminiも急成長【2025年4月最新調査】」(時事ドットコム 2025年4月14日)

生成AIの利用率に関する調査結果では、ChatGPTが全体の70%で最も多くのユーザーに利用されていることが示されています。これにより、ChatGPTが業界におけるスタンダードなツールとしての地位を確立していることがうかがえます。次にGeminiが52%と続いており、ChatGPTに次ぐ主要ツールとしての存在感を示しています。また、ClaudeやNotion AI、Grokなどのツールも一定の利用者数があり、ユーザーが目的や特徴に応じて複数の生成AIを併用している可能性が高いです。

【出典】「【生成AIの利用調査】生成AI市場シェア、ChatGPTが70%で圧倒的首位―後発のGeminiも急成長【2025年4月最新調査】」

主要プラットフォームの最新動向

【参照】OpenAI o3 と o4-mini が登場」(OpenAI 2025年4月16日)

OpenAIは、応答する前に時間をかけて思考するよう学習させた新しいモデル「OpenAI o3」および「o4-mini」をリリースしたと述べています。これらのモデルは、これまでリリースした中で最もスマートなモデルであり、ChatGPT内の全ツールを初めてエージェント的に使用し、組み合わせることができます。また、より複雑な問題を解決するために、いつ、どのようにツールを使用するかを論理的に思考し、詳細で思慮深い答えを生成するよう学習されています。

OpenAI o3はコーディング、数学、科学、視覚認識などのフロンティアを押し広げる最も強力なリーズニングモデルであり、CodeforcesやSWE-bench、MMMUなどのベンチマークで新たな最先端を打ち立てています。多面的な分析が求められる複雑なクエリに最適で、画像や図表の分析などの視覚的なタスクを得意としています。

OpenAI o4-miniは高速でコスト効率の高い論理的思考に最適化された小型モデルであり、数学やコーディング、視覚的タスクでそのサイズとコストに対して高い性能を発揮します。AIME 2024および2025でベンチマークされたモデルとして最高の性能を示しています。社外専門家による評価では両モデルともインテリジェンスが向上し、指示に従う精度や有用性が改善されたとされています。これらのモデルはChatGPT Plus、Pro、Teamユーザー向けに提供が開始されており、無料ユーザーも試すことができるようになっています。

【出典】「OpenAI o3 と o4-mini が登場」

Google Geminiの進化と展開

GoogleはAIモデルとしてGeminiシリーズを展開しています。特に「Gemini 2.5」モデルは応答前に思考を巡らせる推論能力を持ち、性能と精度を向上しています。

Gemini 2.5はネイティブマルチモダリティと長いコンテキストウィンドウを備え、Gemini 2.5 Proはコーディングや複雑なプロンプトに最適で、強化された推論を必要とするさまざまなベンチマークで最先端の性能を示すとされています。数学や科学の主要なベンチマークでも最先端の性能を示しており、ロングコンテキスト機能では100万トークンのコンテキストウィンドウをサポートしています。デベロッパーはGoogle AI StudioやGemini APIを通じてこれらのモデルにアクセスできます。

組織変革と人材開発

生成AIの導入は、企業の組織構造や人材育成のあり方にも変化をもたらしています。

企業における生成AIの導入状況と効果

【参照】役職者1110人に聞いた「生成AI活用の実態」効果が出た業務は?」(ITmediaビジネスオンライン 2025年4月30日)

「企業IT利活用動向調査2025」によると、国内企業の45.0%が生成AIを導入しているという結果が得られています。さらに26.3%の企業が試験的に利用しており、導入を進める企業は今後さらに増えると考えられます。生成AIを導入済みの企業では日常業務(電子メール、資料作成など)で80%以上が効果を実感しており、分析・レポート作成でも79.6%が効果を感じるなど、多くの業務で活用効果が見られています。

【出典】「役職者1110人に聞いた「生成AI活用の実態」効果が出た業務は?」

ガバナンスと倫理に関する懸念

【参照】役職者1110人に聞いた「生成AI活用の実態」 効果が出た業務は?」(ITmediaビジネスオンライン 2025年4月30日)

生成AIの利用におけるセキュリティやプライバシー上の懸念も存在します。全社的に利用している企業では「社内の機密情報(個人情報含む)が生成AIに入力され、それが外部に漏洩する」という懸念が最も多く挙げられています。特定部門での利用企業では「生成AIが出力した偽情報や誤った内容を信じて業務に使用する」(ハルシネーション)が最多となっています。

また「生成AIが出力した情報に倫理的または道徳的な問題が含まれる」という懸念も多く見られます。これらのリスクを踏まえ、企業は情報漏洩を防ぐためのガイドライン策定や従業員のリテラシー向上、AI生成結果の管理・監視体制整備が必要とされています。

【出典】「役職者1110人に聞いた「生成AI活用の実態」効果が出た業務は?」

DX推進における人材育成の課題と手法

【参照】生成AIとDXのけん引役は誰が担う? 人材の発掘・育成方法とは」(ビジネス+IT 2025年4月28日)

DX人材育成の最初の、そして最も重要なステップは、社員のスキルと素養の「現状の可視化と把握」です。自社の社員が持つ潜在能力を把握し、現状と目指すべき姿とのギャップを明確にすることが育成計画の策定や効果測定、適切な人材配置の土台となります。

現状が把握できたら、次はそれを基に「人材育成計画の策定」へと進みます。この計画は中期経営計画やDX戦略、人事戦略といった企業の根幹と連動して策定されるべきものです。近年、この計画策定プロセスにおいて生成AIを活用するトレンドが見られます。育成したい人材の要件などをAIにインプットすることで、育成すべきDSSロールやスキル目標値などのドラフトを効率的に作成することが可能になっています。

計画策定後は「座学育成」「伴走支援による実践準備」「OJTを通じた実践力強化」という3段階の育成プログラムが続きます。ただし、ここで肝心なのは、いきなりプログラムに入るのではなく、前述の現状可視化と人材育成計画策定の2ステップを確実に行うことが育成を成功させる上で何よりも重要であるという点です。

外部に頼れない今だからこそ、自社内のポテンシャルを最大限に引き出すための、計画的かつ段階的なDX人材育成が求められています。

【出典】「生成AIとDXのけん引役は誰が担う? 人材の発掘・育成方法とは」

今後の展望と課題

【参照】AIエージェントの革新 生成AI技術の限界を超えて」(富士通 2025年3月)

主要プラットフォームによる性能競争が進む中で生成AI技術は着実に進化し、企業の業務や社会の仕組みに影響を与えています。しかし、依然として「幻覚」や因果関係の理解における課題が残されており、次なる進化形として注目されているのが「AIエージェント」です。AIエージェントは生成AIに加え複数の技術を統合することで、より高度で複雑な業務タスクを自律的に実行する潜在力を持ち、今後の企業運営の在り方を大きく変える可能性を秘めています。

AIエージェントが出現し、実装された世界ではAIエージェントが主導することで自律的に業務プロセスを実行する未来の企業像が想像できます。そのような企業では、人間は日常業務のオペレーターからAIシステムを監視・調整する役割へと変化していくと考えられます。しかし、この変革を実現し、AIエージェントの持つ力を最大限に引き出すためには、技術的な課題解決だけでなく先行投資、システムの信頼性確保、そして最も重要となる人材育成と必要なスキルの獲得が不可欠です

(著者作成「Napkin AI」より)

まとめ

生成AIが進化し、AIエージェントが実装される社会では、導入だけでなく、それを最大限に活かすための組織全体の変革が不可欠です。価値を起点とした目標の再設計、必要なスキルの明確化と習得支援、さらに変化に強いガバナンス体制の構築が求められています。人とAIが共に価値を創出する時代においては「D(デジタル)」よりも「X(変革)」が企業の未来を左右するカギとなるでしょう。

・大手自動車部品サプライヤでDX推進のプロジェクトマネージャーとして活動
・「TechGALA」で登壇
・「生成AI EXPO in 東海」で登壇
・地元静岡で生成AIやコミュニティに関するイベントを実施

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