ClickHouseがミートアップ開催。ClickHouseの製品とマーケティング担当のVPにインタビュー

カラム指向データベースで高速なリアルタイム分析を可能にするClickHouseは、2025年7月に都内でミートアップを開催した。それに合わせて来日したClickHouseのプロダクト&マーケティング担当のVP、Tanya Bragin氏にインタビューを行った。
●参考:ClickHouseがミートアップ開催。最新情報やPOSデータ分析のユースケースなどを紹介
昨日(2025年7月29日)のミートアップは少人数ながら良く練られた構成でとても良いミートアップだったと思います。ClickHouseの概要から最新情報、そしてClickHouseを使ってPOSデータ分析を高速に行うシステムをQlikViewからリプレースしたパートナーのユースケース、さらに生成AIと組み合わせてClickHouseを使うという今話題になっているトピックに沿った解説とデモという構成で、あの短時間のカンファレンスに収めるにはもったいないほどの内容だったと思います。可能なら1時間程度の時間でそれぞれのプレゼンテーションを聞きたかったです。
Bragin:ありがとうございます。私も初めての日本でお客様やパートナーと接することができて嬉しかったです。あなたが最初に質問してくれたので、他の参加者も質問がしやすくなりました。
では簡単にBraginさんの自己紹介をお願いします。
Bragin:私は大学ではコンピュータサイエンスを専攻していまして、その頃からMicrosoftやDeloitte、Googleなどでインターンとして仕事を始めました。そこからExtraHop Networksというセキュリティ関連の企業で働いた後にElasticに転職して、そこで主にプロダクトマネージメントの仕事をしていました。その後にClickHouseに転職したことになります。
Elasticといえば、オープンソースライセンスのApache 2.0からパブリッククラウドベンダーが商用利用することを防ぐライセンスに変更したことで話題になりました。BraginさんがElasticに所属していた時にそれが起こったんですか?
Bragin:そうです。ちょうどその時は私がElasticにいた最後の頃でした。当時、Elasticのソフトウェアは多くがオンプレミスのデータセンターで使われており、Elasticはオープンソースを開発しながら、どうやってマネタイズを行っていくのか? を模索していた時期でもあります。その時にAWSがElasticのソフトウェアで多くの売り上げを上げているということが背景になってあの変更が行われました。当時のIT業界では多くの論争が巻き起こったことを覚えています。その経験は今のClickHouseでの仕事に役に立っているので、私自身にとっては無駄ではなかったとは言えますね。
Elasticを辞めてClickHouseに転職した理由は?
Bragin:私がElasticに入った時はプロダクトマネージャーとして製品の将来計画や次に開発する機能などを担当していましたが、徐々に組織が大きくなって専門的な分野に特化していくという状況だったんです。そして入社してから7年という時間が経過した時にElasticで経験したことはとても多く、いろいろな事を達成しましたが、やはりゼロから何かを始めるという経験をもう一度したかったというのが大きいですね。
ClickHouseでは製品とマーケティングの両方を担当するということができるようになりました。最初に入った時はまだプライスモデルもなかったくらいですから(笑)。今回のように直接顧客の声を聴くという機会を実現するのは大きな組織では難しい場合がありますが、ClickHouseではそれも可能です。
また、少し前まで企業がオープンソースを使う時は、多くの場合オンプレミスでした。でも今やクラウドサービスが当たり前になっています。オープンソースのソフトウェアをコミュニティと一緒になって開発しながら、クラウドサービスも提供することで企業として持続できるようになります。これはElasticの時に学んだことが役に立っています。
ビッグデータやデータ分析関連のシステムにはThe Apache Software Foundation配下の多くのプロジェクトが存在し、中国では活発に開発とコミュニティ活動が行われています。ClickHouseとして中国でのビジネスをどう見ていますか?
Bragin:ClickHouseがオープンソースとして公開された時に多くの中国企業が採用して使い始めたことは事実ですし、最初のユーザーベースも中国でした。ClickHouseのオープンソースコミュニティも活発に活動しています。そして現在、Alibaba CloudではClickHouseのエンタープライズ版をマネージドサービスとして提供しています。中国でビッグデータが盛んなのは、やはり人口が多いこととスマートフォンを使ったビジネスが成長していることと関連しているとは思います。中国はClickHouseにとってずっと重要な市場でしたし、これからもそうだと思います。もしもビッグデータ関連のプロジェクトで仕事をしているなら、中国でそのソフトウェアが使われているのかどうか? というのが評価のポイントになると思います。つまり想像する以上に巨大なデータをビジネスで使っているというのが中国という市場なんですから。そこで本当の意味で使われているかどうかでそのソフトウェアが評価されるのは当然だと思いますね。
中国で使われているなら世界中のどこでも使えるという良いテストマーケットになりますね。では日本市場に対するアプローチを教えてください。前日のあなたのプレゼンテーションを見るとエンタープライズ企業向けの新機能が説明されていましたが。
Bragin:我々はエンタープライズ企業だけをターゲットにしているのではなく、企業の規模や業界で限定することなくソリューションを提供したいと思っています。しかしユーザーにはClickHouseをどうやって使うのか? という部分を理解してもらわないと先に進めないということも事実です。(前日のミートアップの)例にあったPOSデータのリアルタイム分析だけではなく、オブザーバビリティのデータ分析やIoTデバイスからのデータ分析まで幅広くその使い方を伝えていく必要があります。
もうひとつはやはりパートナーが重要だと思います。なぜならパブリッククラウドはプロプライエタリーなソリューションを素早く提供する非常に有利なポジションにいるからです。その観点からも我々のプロダクトを理解して顧客に提案してくれるパートナーの存在は重要だと考えています。
日本市場で求められている機能についてはどんなものが必要だと考えていますか? 今回の来日で学んだことなどがあれば教えてください。
Bragin:特に日本市場に限ったことではないですが、現在のデータウェアハウスをちゃんとモダナイズすることが必要だと思います。これは単に生成AIを使ってチャットボットを作るという話ではありません。クラウドでデータウェアハウスを実行しようとしてGCPのBigQueryを使うというような状況でよく起こることで、気が付いたら高くついてしまったという失敗談をよく聞くからでもあります。クラウドでデータウェアハウスをやるのであれば、使いやすさだけではなくコストや性能にも注意するべきだと思います。ClickHouseはデータを圧縮することで高速な処理とコスト減を実現していますので、機能と性能そしてコストのバランスがとれたデータウェアハウスを実現するために、再考して欲しいというものです。
今回のプレゼンテーションでも感じましたが、ベンダーのプレゼンテーションが往々にして「成功談」、つまり上手くできたことを披露することに終始してしまうのが残念です。ゼロからClickHouseのビジネスを拡げる機会があるんですから、ClickHouseが体験してきた失敗談を共有して欲しいと思います。これはベンダーだけではなくユーザー企業にもお願いしたいんですが、我々は成功だけではなく失敗からも多くのことを学んでいるので、それをぜひ共有してください。
Bragin:それは良いコメントですね。ちゃんと覚えておきます。
真夏の東京でのイベントやミーティングを終えてこれから家族とともに京都を含む日本の各地を旅するというBragin氏だったが、Elasticでの経験を活かしてフィードバックにも真摯に聞き入る姿が印象的だった。これからのClickHouseの未来に期待したい。
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