連載 [第7回] :
  GrafanaCON 2025レポート

写真で見るGrafanaCON 2025、セッション以外の展示やパーティを紹介

2025年8月26日(火)
松下 康之 - Yasuyuki Matsushita
GrafanaCON 2025、セッション以外の展示やパーティを写真で紹介する。

オブザーバビリティのオープンソーススタックGrafanaと、その周辺のコンポーネントに関するテクニカルカンファレンスGrafanaCON 2025は、シングルトラックのカンファレンスで参加者は同じメインシアターに座り続けて休憩を挟みながら全員が同じセッションを聴くというスタイルだ。トピックの幅が狭いカンファレンスであれば効果的な構成と言える。一方KubeConのようにインフラストラクチャーからAIまで広いトピックをカバーしようとすると、マルチトラックにならざるを得ない。GrafanaCONは2025年で10年目となるが、約600名という小規模なカンファレンスにはシングルトラックが最善の選択ということになる。この稿ではセッション以外のブースやパーティ、ワークショップなどのようすを紹介する。

記念撮影のためのバックドロップ。ここにもマスコットのGrotが登場

記念撮影のためのバックドロップ。ここにもマスコットのGrotが登場

この写真は正式な会期の前日、ワークショップが行われた5月7日に撮影したものだが、シアトルらしいイラストのバックドロップにGrafanaのマスコットであるGrotが登場している。Grotはあらゆる所に顔を出す、言ってみればGitHubのマスコット、モナリザのGrafana版といったところだろう。

会場入り口のホワイエの案内板。4階分のスペースを上手く配分して使用

会場入り口のホワイエの案内板。4階分のスペースを上手く配分して使用

会場のエントランスには4階に分かれたスペースに何が配置されているのかを表示している。1階をグラウンドフロア、2階がファーストフロア、3階がセカンドフロアとなっているのはヨーロッパではよくある構成で、日本人的にはファーストフロアを2階と呼びたくなるところだ。グランドフロアにはスポンサーのブース、ファーストフロアには専門家に質問ができる「Ask the Experts」のブースが設けられている。セカンドフロアが「Microsoft Lobby」と記載されているのは、シアトル生まれの有数の大企業であるMicrosoftがこの劇場のスポンサーをしているためだろう。ちなみにMicrosoftはこのカンファレンスのスポンサーではない。

メインシアターを後方から撮影。椅子が歴史を感じさせる

メインシアターを後方から撮影。椅子が歴史を感じさせる

会場となったMcCall Hallは約100年の歴史を持つシアトルのオペラとバレーのための劇場であるが、シングルトラックのテックカンファレンスの会場として上手く使っていた印象だ。約3000席のキャパシティの劇場を600名だけで使うというのは、相当に贅沢な使い方と言える。

Grafanaのワークショップのようす。各自PCを持ち込んで操作しながら学ぶ

Grafanaのワークショップのようす。各自PCを持ち込んで操作しながら学ぶ

前日には複数のワークショップが行われ、セッションが始まる前に新機能やまだチャレンジしていない使い方を操作しながら理解する機会が設けられていた。複数の部屋を使って効率的に実行されていた。

2025年5月8日から始まった会期の中で最も忙しそうにしていたAsk the Expertsのブースのようすを以下の写真から見て欲しい。

Ask the Expertsのブースはいつも参加者で賑わっていた

Ask the Expertsのブースはいつも参加者で賑わっていた

プロジェクトごとのブースが設置されていないため、Grafana Labsのエンジニアに直接質問をするのはこのブースということになるためか、常に参加者が集って対話が行われていた。

同じフロアにコーヒーや軽食が用意され、座るためのソファーも設置されていることから参加者はリラックスしながらGrafanaのエンジニア達や参加者同士で対話することができるようになっていた。

スポンサーブースはグラウンドフロアに横並びで設置

スポンサーブースはグラウンドフロアに横並びで設置

エントランス奥のスペースにはスポンサーのブースが並び、盛んに参加者を呼び込んでいた。す同じフロアにコミュニティラウンジと称されたブースが用意され、コミュニティに関する質問にも対応できるようになっていた。ブース自体はテーブル1つに椅子が用意され、スポンサーがパネルとデモや説明のためのPCとモニターを持ち込むというシンプルな構成だ。

2階に当たるファーストフロアではサイエンスフェアと称してGrafanaスタックを使ってさまざまな工作をしながらオブザーバビリティを体験するという趣向の展示になっていた。メインのブースを出しているのはこのカンファレンスのトップのスポンサーであるAWSだ。

AWSがスポンサーとなったサイエンスフェア@GrafanaCON

AWSがスポンサーとなったサイエンスフェア@GrafanaCON

RPGを素材にしたオブザーバビリティのデモ

RPGを素材にしたオブザーバビリティのデモ

他にもGrafanaのダッシュボードにDoomを組み込んで参加者を楽しませながらダッシュボードの可能性を見せる形式のブースもあり、楽しみながらオープンソースであることの意味をしみこませようとする意図が感じられた展示となっていた。

ダッシュボードになぜかシューティングゲームのDoomが組み込まれている

ダッシュボードになぜかシューティングゲームのDoomが組み込まれている

他にも3Dプリンターを持ち込み、マスコットのGrotをプリントしながらその工程をモニタリングする展示もあり、工作を題材にさまざまなオブザーバビリティのユースケースを見せていた。

3Dプリンターでマスコットやロゴをプリントする工程をモニタリング

3Dプリンターでマスコットやロゴをプリントする工程をモニタリング

初日の夜にはMcCall Hallのすぐ脇にあるMuseum of Pop Culture(MOPOP)を借り切ってパーティが行われた。

GrafanaCON Community PartyがAWSのスポンサーで開催された

GrafanaCON Community PartyがAWSのスポンサーで開催された

飲食を楽しみながら会場となったMOPOPの展示を楽しむことができるという趣向になっていた。

3階分の展示を楽しみながら参加者同士が繋がるためのパーティ

3階分の展示を楽しみながら参加者同士が繋がるためのパーティ

会場には映画のタイトルやライブコンサートの出演者を模した看板が掲げられており、そこには「今夜限り」の文字の下にGRAFANA DEL RAY、N'GITSYNC、SNOOP LOGGとそれぞれRana Del Ray、N'Sync、Snoop Doggの名前をもじった表記がされており、細かなところにも演出が行き届いていることを感じた。

著名なアーティストの名前をもじったオブザーバビリティネタ

著名なアーティストの名前をもじったオブザーバビリティネタ

McCall Hallのガラス面にはGrafanaスタックの各ソフトウェアの概要が掲げられており、会場の外側にも露出をしていた。

Grafanaスタックのソフトウェアを紹介するバナーが外からも見えるように掲示

Grafanaスタックのソフトウェアを紹介するバナーが外からも見えるように掲示

ちなみにGrotについても解説されており、Twitterの@grafanabotの愛称として使われたのが由来であると書かれている。

Grotの由来やキャラクターなどを解説。コミュニティからもGrafana Labsからも愛されているマスコット

Grotの由来やキャラクターなどを解説。コミュニティからもGrafana Labsからも愛されているマスコット

最終日の最後に行われたクロージングトークでCTOのTom Wilkie氏が登壇し、オープンソースこそがGrafana LabsのDNAであることを強調。

オープンソースがGrafanaコミュニティのコアであることをCTOのTom Wilkie氏が訴えた

オープンソースがGrafanaコミュニティのコアであることをCTOのTom Wilkie氏が訴えた

オープンソースであることで顧客を獲得し、停滞したエコシステムを活性化する。オープンソースこそが最善のソフトウェア開発手法、オープンソースが生成AIのチートコードになっているなどのポイントを再確認してカンファレンスを終えた。

最後にGrafanaCONで特に良かった点を紹介しておこう。毎回、どのセッションでもQRコードからWebアプリにアクセスしてこのセッションに関する質問を書き込めることが強調されており、セッションの最後には寄せられた質問に登壇者が答えるという時間が必ず設けられていた。これは非常によく機能しており、鋭い質問に登壇者が苦労して回答する場面に何度も遭遇した。

以下の写真はCTOのTom Wilkie氏やProject Bobのプレゼンテーションを行ったAndrew McCalip氏などが登壇したパネルディスカッションのものだが、会場から「ダッシュボードからPythonのコードを即座に実行できるようにする計画はないのか?」という質問が寄せられた時はパネラーがその背景を理解してそれぞれの見解を述べ、さらに議論を重ねるという本来の意味のディスカッションが行われていた。テクニカルなカンファレンスでよく行われる「短い自己紹介とプレゼンテーションをパネラーが順番に繰り返す」という形式だけの無意味なパネルディスカッションとはレベルの違う内容になったのも、Q&Aを含めてセッションを意味のある内容にしたいというGrafana Labsの真摯な想いがあった証拠だろう。

参加者からの質問に真剣に答えるパネラー達

参加者からの質問に真剣に答えるパネラー達

2日間、約600名という参加者は今や小規模カンファレンスとカテゴライズされてしまうであろうGrafanaCONに参加して、KubeConのようなメガカンファレンスとは異なる手作り感溢れるカンファレンスの良さを再度認識させられた。日本のITベンダーもホテルや既存のイベント会場を使う発想から離れて、映画館や劇場をカンファレンス会場に使うことを検討して欲しいと思う。

著者
松下 康之 - Yasuyuki Matsushita
フリーランスライター&マーケティングスペシャリスト。DEC、マイクロソフト、アドビ、レノボなどでのマーケティング、ビジネス誌の編集委員などを経てICT関連のトピックを追うライターに。オープンソースとセキュリティが最近の興味の中心。

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