独立前に身につけておくべき知識を知る

本記事では、2025年9月3日発売の書籍「ITエンジニアのフリーランス独立戦略 前職やエージェントに頼らない働き方」第1章の一部を無料公開します。
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本記事では第1章の一部のみを掲載しますが、興味を持っていただけたら、ぜひお買いお求めください。なお、発売を記念して本書を10名の方にプレゼントいたします。詳細は記事末を参照ください。
※本記事はWeb掲載用に実際の誌面を一部改変しています。書籍とは一部異なる部分があることをご了承ください。
フリーランスとして仕事を始めるときは、どのような契約方法があるのか、どのように案件を進めていくのか、どのような働き方があるのかなど、知らないことがたくさんあります。
そこで、独立する前に知っておきたい知識について解説します。
ITフリーランスの働き方とは?
~ITの仕事とフリーランスを知る~
フリーランスとしてITに関する仕事をするとき、その取引先の業界や報酬体系、契約内容などによって働き方は大きく異なります。具体的にどのような働き方があるのかを知ることから始めましょう。
ITに関する仕事とは
ITエンジニアが働く業界としてイメージするのが「IT業界」でしょう。ただし、IT業界といってもその範囲は広く、さまざまな業種や仕事内容があります。
また、IT業界以外の業界にもITに関する仕事があります。ここでは大きく分けて以下の3 つのタイプの業界・企業を紹介します。
- システム開発を担当する企業
- システム開発以外のIT企業
- IT業界以外の企業
そのうえで、ITフリーランスとして参画しやすい業界・企業を考えます。
1. システム開発を担当する企業
ITエンジニアの仕事としてわかりやすいのがシステム開発です。プログラマやシステムエンジニアといった職種があり、プログラミングの技術を使ってさまざまなシステムを開発しています。
大企業であれば、自社に情報システム部門や関連会社があり、そこで開発できることも多いものです。「システム」といってもその種類はさまざまです。
一般に、組織の中で使うシステムは基幹系システムと情報系システムに分類されます(表1-1)。
そして、どの企業でも使われるような汎用アプリか、企業や個人によって使い方が違う独自アプリかによっても異なります。これらを開発する企業は図1-1のように分類できます。1つの企業で異なる種類のシステムを開発していることもありますが、それぞれの企業には得意分野があります。
その他にも、家電やゲーム機などに組み込まれ、ハードウェアとセットで販売されるソフトウェアを開発している企業もあり、組み込み系と呼ばれます。
このように、システム開発といってもさまざまな形態があることがわかります。とくに大規模なシステム開発の案件では、図1-2のように2次請け、3次請けといった形で何重にも作業を分担していることがあります。
この階層の上部については、自社内や関連企業、または専門の企業に依頼することが多いため、ITフリーランスにとっては狭き門です。
2. システム開発以外のIT企業
IT業界の仕事はシステム開発だけではありません。わかりやすい例としてハードウェア業界や通信業界があります。これらは一般的に大きな企業が多く、ITフリーランスが参画するのは難しいと私は感じています。なぜなら、ハードウェアの設計をしたとしても生産するには専用の装置が必要ですし、在庫を抱えるリスクもあります。通信業界も回線の敷設や設備の維持、運用などを考えると難しいでしょう。
一方で、IT業界の中でもITフリーランスが参画しやすい業界として、ITコンサルティング業界があります。システム開発やセキュリティなど、企業の経営者の相談に対して最適な提案をするのが主な仕事です。企業の経営戦略に沿って、どのようなシステムを導入するのかを顧客とともに検討することに加え、ベンダーの選定や導入後の効果測定なども担うため、高いスキルとコミュニケーション能力が求められます。
3. IT業界以外の企業
ITを専門とする企業以外にも、ITエンジニアが働いている会社があります。一般にユーザー企業と呼ばれる会社で、売上の中心となる業務内容はITとは関係ありません。
これらの会社でITを担当する部門として情報システム部門(情シス)があり、その企業で働く従業員が使うコンピュータやネットワークなどの管理をしています。最近では、企業全体のIT戦略を担い、より広範囲の仕事をするコーポレートエンジニアという職種もあります。
主な業務として、次のようなものがあります。
- 所属する企業のIT 戦略の立案
- 使用している業務システムの運用や保守
- 社内ネットワークやパソコンなどの社内インフラ整備
- 問い合わせ対応などのヘルプデスク
自社でスキルを持っている人が少ないと、専門の業者に依頼したり、ITフリーランスに任せたりします。
ITエンジニアの職種
ITに関わる仕事をしている企業について解説しましたが、次に、これらの企業で働くITエンジニアの職種について考えます。職種は企業の種類によって分けられないため、ここでまとめて紹介します。
システム開発を担当する企業では、SE(システムエンジニア)やプログラマはイメージしやすいでしょう。また、その開発を主導するプロジェクトマネージャやプロダクトマネージャのほか、テストの設計や実施、品質を管理するテストエンジニアやQA エンジニアといった職種もあります。
その他にネットワークやサーバーを担当するインフラエンジニアやネットワークエンジニア、データベースエンジニア、セキュリティエンジニアなどの職種もあります。幅広い分野に精通しているエンジニアをフルスタックエンジニアと呼ぶこともあります。
さらに、業務内容によっては次のような職種もあります。
- AI エンジニア:AI(人工知能)の研究などに取り組む
- データサイエンティストやデータアナリスト:大量のデータを分析する
- システムコンサルタント:経営戦略の立案や経営上の課題の解決を担当する
- セールスエンジニア:販売から導入までサポートする
- フィールドエンジニア:IT機器の設置や点検などを実施する
これらの中で、プロジェクトマネージャやプロダクトマネージャのような職種は、その企業の担当者が割り当てられることが多く、ITフリーランスが担うことは基本的にありません。
セールスエンジニアやフィールドエンジニアのような仕事も、その会社が責任を持って担当することが多いものです。外注するときは、専門の企業に依頼することが多く、ITフリーランスに任されることはほとんどありません。
このように、ITエンジニアとしてさまざまな仕事がありますが、ITフリーランスが参画できる仕事はある程度絞られると考えたほうがよいでしょう。
会社員かフリーランスか
ITフリーランスとして働くには、金銭面や待遇など、会社員との違いを理解しておくことが重要です。それぞれのメリットやデメリットを比較して、どのような働き方が自分に合っているのかを考えます。
会社員のメリット
フリーランスや経営者という働き方があることを知っていても、多くの人が会社員として働くのは、それだけメリットがあるからです。
まずは研修制度です。多くの企業では就職したときに、数ヶ月から1年程度の新入社員研修を実施します。また、部署に配属されたあともOJT*1など仕事をしながら研修が続きます。これにより、ほとんど経験がない人でも一定の仕事はできるようになります。技術や知識だけでなく、ビジネスマナーやコミュニケーションなど幅広いスキルを身につけられます。
次に、収入が安定していることです。安定した給与が毎月支払われるのは、会社員ならではの強みです。賞与(ボーナス)があることも大きいですね。
また、厚生年金保険や健康保険といった社会保険制度に加入できることも大きな魅力です。厚生年金保険は会社員にしかない制度で、現役時代の給与が多いほど、高い年金を受け取れるしくみになっています。健康保険や介護保険も保険料を本人が払う分と同じだけ会社も払いますし、労災保険は会社が100%負担しています。
何よりも本業に専念できることが会社員のメリットです。税金や法律などに関する業務は経理部や法務部といった部署が担当してくれるので、自分の仕事に集中できます。
会社員のデメリット
会社員の場合、短期間に収入が大きく増えることはありません。昇進によって収入が増えたり、賞与が多い年があったりするかもしれませんが、それでも年収が突然倍になるようなことはありません。
また、働く場所が会社によって決められています。オフィスや店舗などに出社するか、自宅など連絡が取れる場所で働くことが求められます。転勤などがあると断れず、単身赴任を強いられることもあるでしょう。
そして、働く相手を選べないこともあります。上司や部下、同僚、取引先も会社によって決められており、好きな相手だけを選ぶことは基本的にできません。
フリーランスのメリット
フリーランスのメリットとして、会社員と比べて選択の幅が広いことがあげられます。働く場所や時間を選べるだけでなく、働く相手を選べることも特徴です。フリーランスであれば、自分と合わない相手とは仕事をしない、という選択肢もあります。
また、人事異動などもないため、やりたい仕事を選べます。好きな技術だけを使って仕事をする、興味がある業界の仕事だけをする、といったことも可能です。
さらに、働き方によっては収入を大きく増やせる可能性もあります。開発したサービスが大ヒットしたり、大規模な案件を受注して短期間で納品できたりすると、収入に上限はありません。
フリーランスのデメリット
フリーランスになると、前述した会社員のメリットがすべてなくなります。研修制度もありませんし、収入も不安定で賞与もありません。社会保険料も自分ですべて支払う必要があります。税金や契約などに関する業務も自分で行わなければなりません。
会社員とフリーランスの比較
ここまで解説した内容をまとめると、表1-2のようになります。
会社員からフリーランスへ
一般的には会社員から独立してフリーランスになる人が多いですが、会社員時代に作った信頼はなくなると考えたほうがよいでしょう。現時点で会社員として多くの仕事をこなしている人も、その仕事があるのは会社の「看板」のおかげであることは珍しくありません。
これまで打ち合わせができていた相手でも、個人事業主などフリーランスになった途端に会ってもらうことすらできなくなることがよくあります。会社の名前があるから依頼されていたのであって、それがなくなると依頼もなくなるのが現実です。
これは、経歴を話すときも同じです。「前職は○○株式会社で□□の仕事をしていました」と言えば、ある程度のスキルを身につけていると信頼されますが、その看板がないと何をしていた人なのかがわかりません。つまり、独立したときは前職の肩書きのほうが現職よりも信頼される、ということです。これは前職に感謝しなければなりません。
しかし、ずっとこのような状態を続けるわけにはいきません。フリーランスは前職の会社名ではなく、個人の名前で信頼される必要があるのです。
一方で、会社員の頃は会うことがなかった立場の人と出会えるのはフリーランスのメリットの1つです。たとえば、独立すると相手の会社の決裁者と会うことがあたり前になります。相手が中小企業であれば、その会社の社長と1対1で話すことは普通です。
会社員の頃は担当者間でのやり取りだったものが、社長とのやり取りになることも珍しくありません(自分が経営者の立場なのであたり前ですが)。これによって視野も仕事の幅も広がります。
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